多治見から世界へ。
窯業未経験の専務が挑むものづくり。

京陶窯業(株)

京陶窯業(株)
岐阜県多治見市旭ヶ丘9丁目4-8
TEL:0572-20-2280
https://www.ask-kyoutou.co.jp/

日本の「ものづくり」を支える町工場には、そこにしか出来ない素晴らしい技術や、人間味あふれる開発秘話など、伝えたいストーリーが沢山あります。現場にあるそうした魅力をお伝えしていくのが当コラム「ものづくりの舞台裏」。
記念すべき第1回にご登場いただくのは、「美濃焼」発祥の地、岐阜県多治見市にある京陶窯業株式会社で専務を務める梅田昌裕さんです。60年以上の歴史を持つ美濃焼の老舗陶磁器メーカーは、新しく立ち上げたブランドの製品で、海外のデザイン賞を獲得したとか。なぜブランドを? 気になる舞台裏に迫りました。

土鍋じゃない。DONABE。

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編集部 北野

あのー、すみません。ここで、何やら世界で評価された凄い焼き物を作っていると伺ったのですが…?

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梅田さん

はい、こちらになります!

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編集部 北野

おおっ!? 何やら洗練されたシルエット。これは一体なんですか?

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梅田さん

土鍋です。これ一つで、炊飯、煮物、蒸しもの、オーブン料理まで作ることができます。高い密閉性と遠赤外線効果で、うまみを引き出してくれるんです。

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編集部 北野

とっても機能的なんですね。それに凄くオシャレです。和にも洋にも馴染みそうです。そして何よりこの蓋。ただの飾りではなく、持ち手になっているんですね!このDONABEは、世界でどのように評価されたのでしょうか?

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梅田さん

光栄なことに、“デザイン界のオスカーと”称される、世界三大デザイン賞の一つ「iF Design Award 2021」と、中国国際デザイン賞「DIA」と、アジア国際デザイン賞「DFA」の 3冠をいただきました。デザインやプロデュースは川合辰弥さんによるものです。

地元愛が、国境を越えちゃった!

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編集部 北野

どのような経緯で川合さんと協力することになったのでしょうか?

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梅田さん

2014年くらいに、「一緒に製品ブランドを作りませんか」と声をかけてくださったのが、デザイナーの川合さんとのファーストコンタクトでした。でもその時はあまり興味を惹かれず、一度断ってしまったんです。

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編集部 北野

ええーっ、断っちゃったんですか!でも、それでサヨナラとはならなかったんですよね。

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梅田さん

はい。元々うちの事業は、個人や団体のお客様のオーダーに沿った商品を制作させていただいたり、企業様から依頼された商品を卸すOEMによる制作が中心でした。ですが、近年窯業全体がシュリンクしていく流れの中で、徐々に危機感も強くなっていました……。
月日が流れて2018年頃、「自社ブランドを作りたいな」と思っていた時に、久しぶりに川合さんが連絡をくれたんです。それで一緒にご飯を食べてお話をしたところ、なんと彼も多治見市出身だったことを知ったんです。タイミングですよね(笑)。川合さんもまた「地元を盛り上げたい!」と強く思っていた事も決め手となって、「やりましょう!」と相成りました。

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編集部 北野

なるほど、三度目の正直ならぬ、二度目の正直。KYOTOHブランドは、偶然のタイミングと2人の地元愛によって生まれたんですね!

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梅田さん

そうですね。ブランドを立ち上げるからには、目玉になる商品を作ろう!と生まれたのがこのDONABEでした。お皿やコップだけでは、数多ある他社ブランドの中に埋もれてしまいます。高価格帯で、値段に見合った機能性とオシャレなデザイン性を持つ焼き物。そんな画期的なものを作りたかったんです。そこで最初に選んだのが土鍋でした。DONABEの開発には2年かかりました。特にデザインにはこだわって、3〜4ヶ月を費やしましたね。そしてようやく2021年2月、KYOTOHブランドはDONABEと共にお披露目という形になりました。今では土鍋に加えて、お茶碗やコーヒードリッパーなど、着々とラインナップが増えています。

素焼きのマグカップが居並ぶ工場内の一角。若干の緊張感を覚えます。

DONABEのフタ部分。この特徴的なハンドルのデザインは一度見たら忘れません。

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編集部 北野

おお、どれも素敵ですね!マグカップ一つとっても、シンプルで洗練された、他には見ないデザインです。

作るのが大変な商品だから、
唯一無二の製品になる。

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編集部 北野

京陶窯業の製品もKYOTOHの商品も、斬新なデザインのものが多いですよね。どれも、制作するのは難しそうだなと感じます。

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梅田さん

作りにくくて、真似できない商品が作りたいんですよ。そのこだわりが自分の首を絞めているんですが(笑)。自分には、もともと窯業の経験がありませんでした。だからこそ、どんな無茶なオーダーにも取り組むことができるんです。例えば他の会社が、経験則から「そんなデザインにしたら失敗する。不良率が高くなる…」と思うようなものでも、とりあえずやってみよう、どうにか形にしてみようと臆せずチャレンジできる。それがうちの強みですね。

京陶KYOTOHのプロダクト

土鍋だけでなく、コーヒー用品や様々な食器類にも展開している。どの製品もデザインが秀逸だ。

京陶KYOTOHの調理イメージ

非常に優れた遠赤外線効果と高い密閉性により、炊飯・煮炊きもの・蒸しもの、オーブン料理といった様々な料理をより美味しくしてくれる。

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編集部 北野

なるほど…!。専門外の分野だったからこそ、固定観念にとらわれることなく挑戦ができたんですね。さいごに、今後の展望についても教えてください。

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梅田さん

日本の焼き物は世界でも戦えるポテンシャルがあると、DONABEのiF Design Awardデザイン賞受賞を通して感じました。しかし、どんなに素晴らしい製品でも、知られなければ誰も手に取ることはありませんよね。だから、マーケティングが非常に重要です。大切なのは製品をどうやって知ってもらい、どうやって売るかということ。それをとにかく考え、工夫することに注力して、KYOTOHだけでもしっかりと利益を出せるように、ブランドの認知をより広めていきたいですね。

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編集部 北野

本日は大変貴重なお話をありがとうございました!

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