(株)オオシマ
愛知県春日井市長塚町2-13
TEL: 0568-31-6964
http://ohshima-corp.jp/
フォークリフトなどの産業車両向けにホイールを製造する株式会社オオシマ。ニッチな分野で数十年間、リニューアルされづらい製品をつくりつづけているという。その堅実な事業の全貌について話をうかがった。
あらゆる産業における、縁の下の力持ち
――事業内容について教えてください。
森:昭和16年の創業当時は自転車製造がメイン事業でしたが、1951年からスタートした産業車両用ホイールの製造にだんだんとシフトしていき、現在はそちらに一本化しています。
――産業車両用ホイールとは?
森:工場・建設・農業などの現場ではさまざまな車両が活躍しています。例えば、工場で使用するフォークリフトや農業トラクター、小型建機、リヤカーなどです。これらの車両に特化した車輪のことを、産業車両用ホイールと呼びます。芝刈機やゴルフカートといった変わり種も含め、オオシマでは多種多様な小型ホイールをつくっています。

[写真:左]工場内には大小さまざまな産業車両用ホイールが。いずれも数十年間、ほぼ形状が変わっていないという。原始的な製品だからこそ、流行り廃りに左右されることがない。
[右]ワンタッチで折り畳めるリヤカー「ハンディキャンパー」。ホイールの変わらないニーズの中にありながらも、昨今のキャンプ需要に対応すべくつくられた自社製品だ。
――産業車両用ホイールのビジネス上の特徴は何ですか?
森:“変わらない”ことが大きな特徴です。例えばフォークリフト自体はモデルチェンジしても、ホイールに関しては基本的に変わりません。もし改良を加えたとしても、そのコストを反映した価格はなかなか受け入れてもらいづらいため、現状維持が好まれます。そもそもホイールは、不満を寄せられることも、改良の余地も少ないシンプルな製品なので。未だに1950年の製品がベースになっていたりします。ある意味、イノベーションが起きづらい製品かもしれません。
――確かにホイールって、もうこれ以上何かを足したり引いたりできない気がします。オオシマさんの事業が堅調なのはなぜですか?
森:産業車両の分野は日本メーカーが強いという点が大きいですね。特にフォークリフトの世界シェアは5割以上にもなります。なぜ強いかというと、産業車両には自動車の技術がそのまま採用されるから。ご存知のように日本の自動車メーカーは非常に技術力が高いですよね。

自慢の油圧プレス機。製品自体が変わらないからこそ、品質や生産性をアップデートすることが重要になる。
変わらないものをつくることに価値がある
――オオシマさんの強みは何ですか?
森:小ロットに対応可能なことです。競争相手である海外製のホイールには輸送費が上乗せされるので、小ロットだと割高になります。そこに対応できることが、うちの競争力になっています。あと、機械屋さんからよく言われるんですけど、うちぐらいの規模で大型の油圧プレスがそろってる会社はあまりありません。高品質なホイールを、大小さまざまなロットで効率的につくることができます。
――“変わらない”製品とのことですが、最近はあらゆる現場で自動化が進んでいますよね。そうした変化は脅威ではありませんか?
森:確かに最近は自動化が進んでいます。ただそこには限界があります。例えば自動倉庫なども増えていますが、完全な自動化は難しくて、やはりフォークリフトが未だに活躍しています。同様に農業の現場でも、車輪がなければ畑を耕すことはできません。極端な話、車両が空を飛んだりしない限り、車輪はなくならないんです。
――なるほど、確かに車輪は不滅ですね。
森:ニッチな領域なので、同業の会社もだんだんと減ってきています。かといって新たに参入してくる会社もない。だから幸いなことに、残存者利益を手にすることができています。ローテク製品だからこそ、今後も安定した需要が見込めるんです。創業者はいい事業を見つけたと思います。ただ、将来にわたってずっと安泰なビジネスなど、この世に存在しません。時代の変化には常にアンテナを張り、自らをアップデートし続けるつもりです。たとえこの先も、“変わらない”ことを求められたとしても。
3代目代表取締役の森峰稔さん。物腰が柔らかく、朗らかな笑顔が印象的だった。