乾燥炉の性能を、効果的にあげる方法

熱風循環式乾燥炉や金属・セラミック焼成炉をお使いの工場では、経年による性能低下やトラブルによる生産効率の低下、品質維持、作業環境等、様々な場面で影響を及ぼすことも少なくありません。
そのため、メンテナンスやリプレイスの方法次第で、乾燥性能や省エネ性等を大きく改善することができます。
本記事では、乾燥炉のメンテナンスで見落とされがちなポイントや、実際の改善事例を交えながら解説します。さらに、炉のメンテと製造技術に強みを持つ企業だからこそできた高温・高効率化の事例もご紹介します。
乾燥炉メンテナンスが重要な理由とは?
乾燥炉の経年劣化により、「乾きが悪くなる」「炉内温度にムラが出る」「工場内が暑くなる」「エネルギーコストが高くなる」など、さまざまな不具合が表れます。
- 製品乾燥ムラによる歩留まり悪化
- 消費エネルギーの高騰によるエネルギーコスト圧迫
- 炉内からの熱風漏れによる作業環境の悪化
こうした課題に対し、単なる修理ではなく、製造技術に精通した立場からの構造改善提案や性能向上策が鍵となります。
【Hot topic!】ニイミ産業×日興高熱工業のシナジーにご注目!
乾燥炉や焼成炉の改善提案が、より抜本的で力強くなったわけ──
それは、工業炉の製造に強みを持つ「日興高熱工業株式会社」がグループ会社化したことによる、ニイミ産業の対応力強化にあります。
ニイミ産業はこれまで、現場密着型のメンテナンス・リプレイス提案で多くの工場を支援してきました。そこに、中型~大型炉製造の技術・経験を持つ日興高熱工業が加わったことで、構造設計からの最適化提案や、製品導入による抜本的な課題解決まで一貫対応が可能になりました。「製造×改善提案」の両方を併せ持つ体制で、工場の課題にこれまで以上に本質的に向き合います。
事例
乾燥炉のメンテナンスとリプレイスの事例をご紹介
【事例1】耐火物製造A社|500℃対応の高温乾燥炉で省エネ率50%達成
▼課題:
旧型乾燥炉による高燃費と温度不足
A社では、省エネ化を目的に乾燥炉の見直しを検討していました。従来は180~200℃の旧型乾燥炉を使用しており、熱効率の悪さが問題でした。
高効率・高温対応「ダクトレス乾燥炉」
課題に対してニイミ産業から提案したのは、最大500℃に対応する高効率乾燥炉。従来の乾燥炉では難しかった高温対応を実現したポイントは「ダクトレス構造」。
この構造により、熱ロスの少ない稼働が可能となり、省エネ率は約50%に向上。さらに、高温に耐える独自設計の循環ファンにより安定運用が可能となりました。
▼効果:
- 省エネ率約50%向上!
- 高温環境に対応しつつ安定した製品乾燥を実現!
【事例2】琺瑯加工B社|目視調査で熱漏れ発見、乾燥品質が安定
▼課題:
乾きが悪く、炉の稼働時間が長い
C社では、乾燥炉の熱漏れによって乾きムラが発生し、バーナーの運転時間も長くなっていました。
▼対処・提案:
炉体を目視調査し、ダクトの熱漏れを補修
保温材をはがし、状況を確認。明らかな漏洩箇所と、熱風漏れが疑われる劣化箇所を特定。循環ダクトからの漏れを補修し、バーナーのメンテナンスも徹底して行いました。
▼効果:
- バーナー点火時間の短縮!
- 製品の乾燥品質の安定化を実現!
- 不良率の低減!
【事例3】金属製品塗装C社|熱風漏れ対策で作業環境と製品品質を改善
▼課題:
熱風漏れで工場内が暑く、製品の乾燥ムラが発生
乾燥炉の下流側ダクトが経年劣化で大きな穴が開き、熱風が漏れている状態でした。それにより製品の乾燥ムラや作業環境の悪化を引き起こしていました。
▼対処・提案:
ダクト部分の交換と補修
サーモグラフィを用いて熱漏れ部分を特定し、破損部のダクト交換、微小漏れ部の部分補修を実施しました。サーモグラフィを用いた効果検証まで行いました。
また炉内ダクトの補修をすることにより、炉内温度の均一性が向上しました。
▼効果:
- 製品の乾燥ムラが解消!
- 乾燥炉周りの放射が抑制され、作業環境が改善!
- エネルギー効率の向上!
【事例4】セラミック業D社|窯業原料の内製化のため乾燥炉製作・設置
▼課題:
窯業原料内製化のための乾燥炉が欲しい
窯業原料を他から仕入れず内製化するため、新設した工場にて原料乾燥の為の乾燥炉を作成してほしいと依頼いただいた。
▼対処・提案:
補助金を用いた乾燥炉の導入(省エネタイプを選定)
以前提案されていた仕様が排気をすべて捨ててしまう仕組みであったため、排気再利用の省エネタイプをご提案。また、補助金を活用し負担費用を低減。現場から要望も多かったため、オーダーメイドの乾燥炉を製作しました。
▼結果:
- 現場の作業効率の向上により生産性UP!
- 省エネ効果約30%実現!
- 温度管理の完全自動化による乾燥時間の短縮!
よくあるトラブルとメンテの要点
循環ファンの軸受けベアリング
循環ファンのベアリングは高温下で負荷が大きく、定期的なグリスアップが必須です。異音や異常振動がある場合、すぐにチェックが必要です。
Vベルト・モーターなどの定期チェック
ファンやベルト、熱源系などは定期メンテナンスで延命が可能。焼き付きや破損前に対処するのが重要です。特に立ち上げ時の摺動音(しょうどうおん)はベルト交換のサインです。
乾燥炉性能の安定化のカギは “ベアリンググリスの最適化”
高温環境においては、上記項目の事例のように使用するベアリング潤滑グリスの種類選定が乾燥炉性能の安定化を左右します。環境に適していないグリスを選定することでベアリングの稼働に影響を与えてしまい循環ファンなどの炉の主要部の故障を引き起こす可能性があります。
またライン式の乾燥炉を使用している場合は、チェーンレールのグリスも注意が必要です。適していないグリスを使用すると固化したグリス(黒いカス)がレールから落下し、不良品の発生原因となります。 そのためグリスの特性を把握したうえでの使用が重要となります。
グリスの特性による違いは
- ウレア系:170℃前後まで
- フッ素系:300〜400℃に対応
- それ以上:固体潤滑材入り特殊グリス(銅・モリブデン等)
適切なグリス選定で軸損傷を防ぎ、不良品の原因となる黒いカス(スラッジ)を抑えることも可能です。ニイミ産業には潤滑油を取り扱う石油部門がありますので、こうした潤滑油関連の支援も可能です。
まとめ
事例集・お役立ち情報・相談窓口
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資料ダウンロード
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社内でご検討用にメンテナンスの流れや実績などをまとめた資料をPDFでご用意しています。無料でご覧にいただけますのでダウンロードしてご活用ください。
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お問い合わせ・ご相談・現場調査のご依頼
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お電話でのお問い合わせもお気軽にどうぞ。専門知識をもった担当スタッフが丁寧にお応えいたします。ご希望の場合はご訪問でのご説明も可能です。
- お電話:0568-81-8461
対応エリア
東海三県(愛知県・岐阜県・三重県)を中心に滋賀県東部、静岡県西部など近隣エリアをカバー。各地域に拠点を構え、途切れることのないガス供給網を構築しています。

炉のプロが提案する“根本から見直す乾燥炉リプレイス&メンテ”
乾燥炉のトラブルや性能劣化は、表面的な補修だけでは根本解決ができないことも多くあります。今回ご紹介した事例のように、単なる修理ではなく、乾燥炉の構造や熱循環に精通した専門家による提案型のメンテナンスで、省エネ・高効率・品質改善を実現することが可能です。ニイミ産業は、これまで炉の製造・設計からメンテナンスまでを一貫して行ってきた実績があります。2024年の工業炉製造に強みを持つ日興高熱工業のグループ化により、乾燥炉の構造・性能に対する総合的な対応力がさらに強化されました。
高温域への対応・省エネ・カスタムメンテナンスなど、「高性能かつ、使い続けられる乾燥炉」の実現に向けたご相談は、ぜひニイミ産業まで。
穂積 徳
西濃エリア(各務原~長浜)を担当しています。 前職の総合建設コンサルタントでの省エネ対策や建屋修繕などの実績があり 現場で困っている人たちに協力したいという想いから転職。 「お客様のお役に立つ」を念頭に置き定期訪問や様々な課題改善に励んでいます。 お客様の悩みや不安に寄り添って解決できる営業マンを目指し日々奮闘中。