熱処理炉との上手な付き合い方!
炉製造とメンテナンスの知見からのアプローチ

はじめに

金属の強度や耐摩耗性を高めることなど、金属加工に欠かせない「熱処理」の工程。その要となるのが、バッチ式炉・連続式炉・ピット炉など多様なタイプの熱処理炉です。

金属加工・部品製造の現場に欠かせない「熱処理炉」

熱処理炉は、高温(1000℃前後)にさらされ、酷使され続けるため炉壁の損傷や断熱材の劣化など炉体がダメージを受けやすく、10年〜20年ごとといった一定のサイクルで炉そのものをリプレイスされることが多い設備です。

定期的なリプレイスが当たり前とされていますが、メンテナンスの工夫や、省エネ性能の高い製品の選定などによって、熱処理炉を長期的に効率よく活用する方法はあります。
本記事では、実際のケーススタディを交えながら、熱処理炉との賢い付き合い方や、運用寿命を延ばすためのヒントをご紹介します。

長く使い続けるために私たちにできること

「バーナーメンテ・工業炉メンテのノウハウ」×
「日興高熱工業がもつ根本的かつ幅広い炉の製造技術」

ニイミ産業は、工業炉の燃焼プロセスの要となるバーナーメンテナンスをきっかけに、さまざまな業種・規模の工場で工業炉のメンテナンスを手がけてきました。

こうした現場での経験を重ねる中で、「もっと根本的なところから工場のお困りごとに応えたい」という思いもあり、多種多様な工業炉の設計・製造を行っている日興高熱工業をグループに迎えました。ニイミ産業が蓄積してきたバーナー・炉のメンテナンスと様々なシナジーを発揮し、工場の経営に役立っていきたいと考えています。

機械商社やメーカーでもなく、私たちだからこそ実現できること

  • 工場ごとの視点にたち、悩みに寄り添ったご提案
  • ガスやバーナーといった燃焼プロセスの知見
  • 製造ノウハウに基づく設計レベルの視点を踏まえた補修対応
  • 省エネ効果や品質向上など機能性の高い炉製造の知見も活用

熱処理炉と「上手に長く」付き合うための具体策

ここでは、ニイミ産業が対応してきた事例や、経験を基にした具体策をご紹介します。

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炉内温度ムラを±25℃から±10℃へ改善

課題:
バッチ炉では扉前・煙道付近・上下間などで温度ムラが発生するケースがあります。 経年劣化により温度分布の調整がずれ、不良品の原因となっていた。これまで対策するにはバーナーごとの効率的な出力調整の手法がなく、1本1本の手作業の調整を強いられていた。

対策:

  • 各バーナーに独立した温度制御を行わせる方法を導入
  • 1本1本の手動微調整が不要になり、メンテ時の再調整作業も削減

結果:
炉内温度幅が±25℃ → ±10℃へ大幅改善。 この改善事例のそのものが、取引先に対するアピール材料にもなったということで、経営上非常に有益な改善事例となった。

熱処理炉の温度のムラが±10℃に大幅改善
 

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特殊な炉のバーナーメンテで点火不良を解消

課題:
個人が設計・製造した金属プレス前の熱処理を行う炉で、バーナーが点火しない不具合が発生。既存の関係者では対処不能となり、メンテナンスができる企業を探していた。

対策:

  • ガス出口の鉄粉・スス詰まりを分解清掃し点火を確認
  • ブロア用フィルター清掃と炉内耐熱レンガ点検を実施
  • 点検時に劣化の早期発見も可能に

結果:
点火不良を解消し昇温時間を短縮。バーナーを外したタイミングで炉内部を点検し、隠れた劣化の早期発見にも貢献しました。これにより、作業効率と炉の信頼性が向上し、定期点検の重要性を再認識する契機となり炉の長寿命化への意識改革につながりました。

  バーナーメンテナンス

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バッチ炉の部分補修で長寿命化&コスト削減

課題:
バッチ式熱処理炉は高温稼働により、炉壁や断熱材が徐々に劣化します。 特に損傷が始まると劣化のスピードが一気に加速し、放置すれば鉄枠まで傷みが進行。結果として長期停止や大規模修理を余儀なくされる恐れがあります。

対策:

  • 「どこを、いつ直すか」を見極めた部分補修を実施
  • 補修範囲を最適化し、ムダな工事を回避
  • 熱のまわり方や炉材選定は専門家の意見を反映
  • 定期的な補修サイクルを設定し、計画的に対応

結果:
計画的な部分補修により、損傷の進行を早期に食い止めることができました。その結果、炉の寿命は延び、突発的な停止や大規模修理のリスクが大幅に低下。予算も見通しやすくなり、長期的には修理コストの削減につながりました。

バッチ炉の部分補修

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省エネ型バッチ炉への更新で燃料コスト約30%削減

課題:
老朽化した従来炉の更新時に、燃料コスト削減が求められました。省エネ性能の高い設備導入が検討されていた。

対策:

  • 省エネ型「リジェネバーナー」搭載バッチ炉を採用
  • バーナー設置位置を工夫し、温度不安定などのデメリットを緩和
  • 立上げ時間の延長は運用調整で対応

結果:
従来炉比で約30%のエネルギーコスト削減を実現。 工場と炉の製造側が協力し、更新のタイミングを機に、燃料コストの大幅な削減を実現できた好事例といえます。

【リンク:リジェネバーナー搭載型バッチ炉について→】

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既設炉に後付けで省エネ化を後押し

課題:
燃料と空気の比率(空燃比)が適正値から外れると燃費は悪化します。 手動調整はフィルター詰まりやノズル不良で維持が困難となるケースがあり、現実的で持続可能な対策が求められていました。

対策:

  • 燃焼状態を数値化し、作業員の省エネ意識も向上
  • 空燃比の「見える化」を支援し、継続的なモニタリングと改善体制を維持している

結果:
具体的削減量は未計測だが、省エネ効果と調整作業の効率化に寄与。このケースでは見送ったが、自動で最適空燃比に調整する装置を導入可能です。

まとめ:炉の延命から性能向上まで、製造もメンテも駆使し課題を解決

熱処理炉のリプレイスやメンテナンスに関していま改めて見直してみませんか。各工場固有の複雑な問題点を踏まえ、ボトルネックを解消し、より生産性を高めることにつなげられるはずです。

ニイミ産業は、メンテナンス技術に加えて、日興高熱工業との連携により炉の設計・構造を熟知したうえでのメンテ・改造・更新提案が可能です。

  • 既存設備を活かして部分補修による延命・安定化処置したい
  • 燃費改善や排ガス対策など未来志向の省エネ化をしたい
  • 既設炉の延命とリプレイス、どうすればいいいか悩んでいる…

そんなの熱処理炉に対する課題・ニーズに私たちニイミ産業グループは工場の現場と経営の目線で寄り添います!

熱処理炉に関するお悩みや現状確認のご相談は、お気軽にお問い合わせください

谷口 寿規
谷口 寿規

日興高熱工業株式会社所属。ニイミ産業でガス設備全般の業務に従事し、主に工業用バーナーについて専門的に取り組む。 日興高熱工業のグループ化に際し、同社に出向し現職。出向後は、工業炉を専門的に担当し、 炉効率計算など顧客のニーズに合わせたサービス・情報提供に取り組み、SII補助金申請も行う。 遠方の顧客対応もこなし、年間走行距離は地球一周と同じ。

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