アルミ連続溶解炉を長持ちさせるには?
炉とバーナーメンテのプロからのアドバイス

アルミ連続溶解炉を長持ちさせるには? 
炉とバーナーメンテのプロからのアドバイス

アルミダイカスト工場では、連続溶解炉が製造工程の中心的な役割を担っています。 ですが、「7年もすれば交換は仕方ない」と長く活用することを諦めていませんか?
本記事では、バーナーおよび燃焼設備、工業炉メンテナンスやガス供給に専門性を持つ私たちの視点から、連続溶解炉の寿命を延ばすためのポイントをご紹介します。

結論から言えば、見落とされがちな「バーナーとその周辺の管理」こそが延命のカギ
炉全体をリプレイス(更新)するだけではなく、部分修理やバーナーを適切にメンテナンスすることで、設備寿命・燃費・品質のすべてに良い影響を期待できます。

連続溶解炉を長持ちさせるために
押さえておきたいポイント

まずは、連続溶解炉を使う中で一般的に取り組まれている対策からおさらい。「アルミ酸化物による炉体ダメージ」や「運用方法」、「メンテナンス」などを例に挙げながら、それを抑えるための基本的な考え方を整理していきます。

【1】アルミ酸化物がつきにくい構造を選ぶ

炉内で酸化物が発生しやすい構造・環境を見直すことで、溶解炉へのダメージを抑制できます。

※アルミ酸化物とそのリスク
アルミ溶解時に発生する「アルミ酸化物」は、炉内に付着・蓄積していくことで炉体そのものを変形させてしまう原因になります。
変形が進むと、炉の扉や掃除口に隙間が生じ、熱効率の低下・異常燃焼・安全性の低下を招きます。さらに放置すると、炉の本体ごと交換が必要になるなど、高額な修繕コストにつながる恐れも。
こうしたリスクはゼロにすることはできなくても、大幅に軽減することは可能です。

具体的には

  • 電気保持室の採用。
    ガスより電気のほうが酸素を取り込まず、炉内温度も安定するため、酸化物が発生しにくくなります。
  • 出湯量に合った炉サイズにする。
    大きすぎる炉は無駄な加熱を招きます。出湯量に合った設計で、酸化物の発生を抑えられます。
  • 酸化物がつきにくい炉材を選ぶ。
    酸化物付着を抑制する特性を持つ耐火物も開発されており、長期的なメンテコスト削減が期待できる。
  • 浸漬バーナーの採用。
    バーナーを溶湯内に沈めて加熱する方式で、温度管理が安定し、酸化物の発生が抑えられるのが特長。

【2】空焚きを防ぐ、正しい使い方を徹底する

溶解炉の寿命を大きく縮める「空焚き」を防ぐ運用管理が重要です。

  • 溶湯や材料(インゴット、リターン材)が入っていない状態でのバーナー稼働(空焚き)は炉体劣化の原因となります。
  • 原料投入量を安定化させ、常にアルミがある状態を保つ運用が求められます。
  • センサーやタイマー、投入管理など、空焚きを予防する仕組みづくりも効果的です。
  • オペレーター教育による認識統一も、空焚き防止において重要な要素です。

【3】「清掃・補修でメンテナンス」と「バーナーメンテ」

アルミ酸化物の発生は完全にゼロにはできませんが、その原因である燃焼プロセスに着目し、最適化することで炉の長寿命化や生産性の向上を図る事が可能です。

バーナーの空燃比調整・メンテナンス

バーナーの空燃比がずれていると酸素が過剰に供給され酸化物の生成が増えます。 定期点検で空燃比を適正化し、燃費改善も同時に狙えます。
溶解スピードなども関係してきますので、普段から意識し検証していく事から始めるべきでしょう。

※【空燃比(くうねんひ)とは?】
燃料(ガスなど)と空気の混合比率のこと。 空気が多すぎても少なすぎても「燃え方」が不安定になり、温度ムラや過燃焼の原因になります。クルマのエンジンやガスコンロと同じく、最適なバランスで燃やすことが重要です。
炉体の早めの補修・部品交換

掃除口や扉の歪みは、酸化物の蓄積で発生しやすいトラブルです。
一度変形すると戻らないため、広がる前に補修することが肝心です。
また、炉壁のクラックなどに酸化物が付着すると除去はほぼ不可能です。クラックや隙間を埋める補修も寿命延長の重要な課題です。

専門業者による定期清掃

付着した酸化物は、放置すると除去が大変になります(削岩機での除去、ランス棒で千数百度で焼くなど)。自社社員で行うと労力もさることながら、炉壁の損傷を恐れて十分な酸化物の除去が出来ない事も多いです。
専門業者による定期的な除去は従業員への負担を減らし、酸化物の十分な除去を行う事により、結果的に延命につながります。
当然、外注費用も発生しますので、費用対効果を検討しながら進める事が大切です。

見落とされがちな「バーナーメンテナンス」が、
連続溶解炉の寿命を左右する!?

炉全体の問題よりも、”バーナーの状態”が炉の生産性や寿命を左右しているケースが意外に多いです。

「バーナー」の状態が炉全体に影響している─

連続溶解炉の基本的な構成要素である「バーナー」の不調・劣化や、その「空燃比」のズレは、以下のような悪影響を引き起こします。

  • 炉内の熱の分布のばらつき
  • 燃費の悪化

バーナーの正常な性能を保つことができれば、上記のトラブルを防ぎ、結果として連続溶解炉全体の寿命を延ばすことができます

「バーナーメンテ」実績が豊富なニイミ産業

ニイミ産業グループでは、以下のようなバーナーメンテ・改修実績があります。

  • ブロワーの点検・分解清掃
  • 燃焼プロセスのチェックと調整
  • 各種バーナーの部品交換・オーバーホール
連続溶解炉のバーナーメンテナンス

バーナーメンテナンスの実績はこちら

私たちは「炉のメーカー」でもあり、「燃焼プロセス・バーナー・燃料のプロ」として多数の工場を支援してきました。
工業炉の設計からメンテナンスまで一貫して対応できる数少ない存在であると考えています。

ニイミ産業グループだからできること

  • ニイミ産業グループには高品質な工業炉の設計・製造を行う日興高熱工業株式会社があります。
    それにより、ニイミ産業による専門的な工業炉・バーナーのプロメンテサービスとの組み合わせによる総合提案が可能です。

    幅広いサービスによる相乗効果と、当社が大事にするの「顧客目線」「工場目線」の姿勢で課題解決をサポートします。

  • 日本高熱工業株式会社

事例紹介

事例①:
S社 カーボンニュートラルの取組として電気ハイブリット式溶解炉の導入

電気とガスのハイブリッド炉を導入し、2年以上トラブルなく稼働中のケース

CO2排出量削減の一環として、電気+ガスのハイブリット式連続溶解炉を選択。 保持バーナーに替わり電気ヒーターを利用したことにより、保持室の酸化物抑制効果も。

CNの取組として電気ハイブリット式溶解炉の導入

事例②:
U社 連続溶解炉のブロワー・バーナーメンテナンス事例

燃焼調整により酸化物の生成を抑制しつつ、 燃費向上・省エネにも寄与したメンテナンス

今回のメンテナンスでは、バーナーのみならずブロワについても分解清掃をさせていただき、羽根やケーシングに付着していた油煙を含んで粘性が高くなった汚れを取り除くことでブロワの回転に伴う負荷を軽減できた。(※消費電力の低減。)
主となるバーナーメンテナンスの実施にて煤汚れや付着していたアルミを除去したことで、フレーム電流値も上昇・安定し、失火や不着火などが起きない安定稼働が図れた。
併せてバーナーの燃焼調整によりエアー投入量を極力抑えた燃焼にすることで、酸化物の生成を抑制しつつ省エネにも寄与できた。

酸化物の生成抑制しつつ、
燃費向上・省エネにも寄与したメンテナンスの画像

実績紹介:
日興高熱工業製の連続溶解炉、300基以上製作・納入実績

日興高熱工業は、1968年の小型反射式溶解炉の販売開始以来、国内外の多くのお客様に採用いただき、これまでに累計600台以上(反射式約300台)の連続溶解炉を製作・販売してきました。
日本国内のみならず海外拠点でもさまざまな現場で稼働を続けています。
お客様一人ひとりのご要望に応じた製品仕様のご提案が可能で、販売後の補修・メンテナンス性を考慮した設計を徹底しています。その結果、導入後も長期間ご使用いただける製品となっており、数十年にわたり継続稼働している設備の事例もあります。

まとめ

連続溶解炉は「壊れて当たり前」「5年10年で定期的にまるっと更新して当たり前」ではないと考えます。
適切な設計、使い方、メンテナンスを通じて、10年以上使い続ける工場も実在します。

  • 炉の構造設計を最適化
  • 空焚きを防ぐ運用管理
  • 定期メンテナンス・部分補修
  • IoTなど新技術の活用

こうした工夫で、設備投資を抑えつつ高効率生産を続けられます
「連続溶解炉を長持ちさせたい」「酸化物付着を減らしたい」とお考えの方は、ぜひご相談ください。
貴社の状況や運用体制に合わせた最適な提案をさせていただきます。

谷口 寿規
谷口 寿規

日興高熱工業株式会社所属。ニイミ産業でガス設備全般の業務に従事し、主に工業用バーナーについて専門的に取り組む。 日興高熱工業のグループ化に際し、同社に出向し現職。出向後は、工業炉を専門的に担当し、 炉効率計算など顧客のニーズに合わせたサービス・情報提供に取り組み、SII補助金申請も行う。 遠方の顧客対応もこなし、年間走行距離は地球一周と同じ。

事例集・お役立ち情報・相談窓口

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