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ニイミ式リジェネ炉の開発秘話

ニイミ産業が開発・販売を行う「ニイミ式リジェネ炉」について「型技術 2025年5月号(日刊工業新聞社編集)」に掲載された、ニイミ式リジェネ炉の開発ストーリーをご紹介いたします。


特集 : 次世代のモノづくりを支える注目の金型・成形技術 最新トピックス

ニイミ式リジェネ溶解炉
-開発の変遷に見るダイカスト工程省エネへの挑戦-

ニイミ産業㈱ 北野 秀樹

Hideki Kitano:常務取締役
〒486-0932 愛知県春日井市松河戸町1360

陶器用からアルミ溶解炉へ

当社はLPガスを使用した国産の陶磁器用焼成炉を日本で初めて製造した企業である。
窯業が盛んだった1980年代まで2,000基余りの陶磁器や瓦の焼成炉を製造したが、窯業の衰退とともに、乾燥炉や溶解炉など、モノづくりが盛んな中部地方で多く使われる工業炉の分野に参入した。
その中部地方でも特に盛んなものが自動車製造業である。自動車は、ブレーキやサスペンション、エンジン部品に至るまで、さまざまなアルミ部品から成り立っている。そしてこのアルミ部品はアルミダイカストと言われるアルミ合金を溶かして、金型に高速で充填し、高圧で押し固める技術で製作される。
このアルミ合金を溶かす工程でアルミ溶解炉は使われ、当社も丸炉または「るつぼ炉」と呼ばれるLPGバーナーを用いてアルミニウムを溶解する溶解炉を製造し、市場に提供していた。当初製造したアルミ溶解炉は、単にるつぼにガスバーナーの炎を当ててるつぼを加熱し、簡易的な熱交換器を備えたつくりの溶解炉であった。

溶解に使うエネルギーコストの課題

そして現在、当社では主にダイカスト加工の工程内で使用される「ニイミ式リジェネ溶解炉」の開発・販売を行っている。今回はこの開発の具体的変遷やその効果について解説していきたいが、まず「リジェネ溶解炉」の定義とその開発までの経緯について説明したい。

リジェネとは、Regenerative Burner(リジェネラティブ バーナー)の略称で、工業炉において極めて高い効率で排熱を回収できる燃焼加熱の仕組みである。燃料消費削減効果が高いことから、圧延炉、鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉、脱臭炉などの比較的高温の炉において、コスト削減、省エネ、CO₂排出量削減の手段として採用されている手法の一つである。リジェネバーナーは通常、蓄熱槽と一体化した1対のバーナーを有し、数十秒間隔で交互に炎を発生させる。一方のバーナーが燃焼している間、排ガスは蓄熱槽内の他方のバーナーの蓄熱媒体を通過して加熱され、排ガスのエネルギーを回収し、他方のバーナーが燃焼するときには、燃焼空気が蓄熱槽を通過する際に予熱され、従来はムダにしていた排ガスのエネルギーを回収し、高効率燃焼を実現する仕組みになっている。

当社が排熱回収に着目したのは、溶解炉の排気筒から出る排気の温度が800℃超と、かなり高温であるうえに、炉が稼働している間、ずっとその高温の排気が出続けるという点にある。
ちなみに連続式の乾燥炉などでは、せいぜい200℃程度である。溶解炉の高温の排気中の熱を回収して、もう一度利用できれば、かなりの省エネが実現できると考えたのだ。過去に、原油、LPG、LNGの価格が高騰した際には、ダイカスト工場のユーザーからダイカストの製造原価のうち、溶解に使うエネルギーのコストが占める割合がどんどん上がり、採算が見合わなくなっているという声を聞いた。なんとか同じ仕事をしてもガスの使用量を減らすことはできないか? という強い要望があった。

また、この高温の排気が出る工場の夏場の職場環境は多くの場合、工場内の温度が40℃を軽く超える酷暑の環境である。しかし、常に高温の排気が出ている工場内で冷房を入れるということは実情にそぐわないため、従業員につらい環境を強いていた。800℃の排気が150℃の排気になれば、職場環境の改善という点でも大いに役立つ、というのも着目に値するのではないか。こうした考えから当社の中で「リジェネ」溶解炉の開発が始まった。

1型から2型-蓄熱体の工夫と効果

まず開発したのは2014年の1型のリジェネ溶解炉である。高温の排気から熱回収を行うためにセラミックボールの蓄熱体に燃焼ガスを通過させる方式を採用していた。セラミックボール(図1)を採用した蓄熱部は、高温の熱風が熱交換しながら通過していく間隙が直線的ではなく、ボールとボールの間を通過していくために圧力損失が大きく、定格運転時の炉圧が高く、1.45~1.5 kPaであった。

セラミックボール

図1

 

炉圧が高いと、るつぼと炉壁の隙間から炎と熱風が吹き出し、熱ロスにつながる。隙間から熱風が噴き出すのを防ぐために炉蓋をしっかり固定し、るつぼとの隙間を分厚いファイバーなどで埋めていたが、熱や熱風によってファイバーが傷みやすく、頻繁にファイバーの手入れをすることが必要になっていた。また、これを放置してしまうと、熱風が漏れることで省エネ性能が大きく低下してしまうということが問題となっていた。

そこで、2018年に開発した2型の改良タイプでは、セラミックボールの代わりに蓄熱体をハニカム型のセラミック(図2)で構成した。ハニカム型セラミックでは、蓄熱部の排気の通路が直線的で定格運転時の炉圧は、0.9~1.0 kPa とかなり低くすることができた。炉圧が低くなったことで、炉蓋とるつぼの間から熱風が吹き出て効率が低下するトラブルをかなり低減することに成功した。

ハニカム型セラミック

図2

 

また1型溶解炉の直径40 mmのセラミックボールを使用した蓄熱部には、重量で60 kgのセラミックボールが入っていて、かなりのスペースが必要であり、その蓄熱部の容積が合計で350 Lであった。この60 kg分のセラミックボールの表面積は、約23,000 cm²である。

一方、2型では、ハニカム型のセラミックを採用したことにより、熱回収を行う際に必要な表面積を大きくとれるようになり、蓄熱部を大幅に小型化することに成功した。
具体的には、従来のセラミックボールの1/12の重量の約5.2 kgのハニカム型セラミックを使用していて、その表面積は28,800 cm²である。容積比でセラミックボール型蓄熱部の容積72%削減の98Lとすることができた。実際ダイカスト製造工場では、狭いスペースにダイカストマシンと隣り合わせで設置されることが多いため、できるだけコンパクトであることが求められる。

ダイカストの溶湯温度は通常660~680℃程度が一般的である。高温の燃焼ガスでるつぼを介して、インゴットを溶かし、溶湯をこの温度にするには、炉内は1,000℃程度にもなる。

省エネ性能の心臓部のセラミック蓄熱体は2対設置してあり、片方が排気を通して蓄熱している間に、高温になったもう片方のセラミック蓄熱体に燃焼用の空気をブロアで供給し、蓄熱体を通過させる。常温の燃焼用の空気は、蓄熱体を通過する際に400~500℃程度に加熱され、さらにガスと混合し燃焼させ、炉内に導かれる。炉内を竜巻状に円周に沿って燃焼ガスが通過しながら、るつぼを介して溶解を行う。溶解に使用されたこの高温の燃焼ガスは、もう片側の蓄熱体側から排気される。排気される際に蓄熱体を通過して、再度蓄熱体と熱交換される。

高温の燃焼ガスは蓄熱体を通る際に熱を奪われて、120~150℃程度まで温度が下がって、排気筒から排気される。従来の蓄熱機能がないアルミ溶解炉では、800℃前後の高温の排気をそのまま大気放出しており、熱エネルギー的にもCO₂の排出から見ても、かなりムダに排出されていた。
市販されている他社のリジェネバーナーでは、排気温度は200℃を超えているので、当社が開発したハニカム型セラミックを採用した排熱回収の仕組みは、省エネ・CO₂の削減に大きく貢献できるはずだ(図3)。

表

図3 セラミックボールとハニカム型セラミックの蓄熱隊の比較

排熱回収で省エネを実現

3型-ガス代・CO₂の排出量50%減

そして昨年「2024 日本ダイカスト展示会」で展示発表した3型では、上述の改良に加え、炉体の構成を再度見直した。
今回の改良点は、さらに省エネ性能を高めるために、燃焼室の築炉構成を従来の断熱・耐火レンガで構成されたものから、断熱・耐火レンガとファイバーのハイブリッド構成として断熱性能を高めた結果、断熱性能の向上と蓄熱量の削減に成功した。
2型のものは燃焼室の壁の熱流束が1,149(W/m²)に対し、3型のものは842(W/m²)と36%断熱性能が上がった。蓄熱量は2型が78,051(kJ/m²)から3型24,576(kJ/m²)と69%減らすことができた(図4)。

炉体構成の変更

図4 炉体構成の変更

 

この3型のニイミ式リジェネ溶解炉は、標準仕様でバーナー出力が95~155 kW/h、定常時の溶解能力は70 kg/h(最大100 kg/h)となっている。立上げ時の溶解能力は300 kg/3 hである。使用用途によっては、ターンテーブルに乗せて設置し、供給側で溶湯を汲み取り、予備側でインゴットを溶解することを交互に繰り返すことにより、最大100 kg/hの溶湯供給を継続することが可能である。

ターンテーブルタイプ

ターンテーブルタイプ

 

上述のような性能により、当社の試験結果や客先での実績データを総合すると、排熱回収機能のない溶解炉と比較して、約50%のガスを削減できる。CO₂の排出量もともに50%減となり、コスト削減とCO₂排出削減に大きく貢献できる。

排熱回収の仕組みのない溶解炉でLPG 1m³ 99 MJ(24,000 kcal)として、定格運転(ガス消費量160 kW/h=567 MJ/h=5.73 m³/h)で1日8時間燃焼したと仮定すると、使用した燃料は1日当たり5.73×8=45.8m³となる。1カ月22日稼働とすると、45.8×22日=1,007.6 m³のLPGを消費する。ここで仮にガス価格を1m³=300円で計算すると、1カ月間のガス代は1,007.6×300=302,280円かかることになる。これをニイミ式リジェネ溶解炉に置き換えるとほぼ50%のガスを省エネできるので、1カ月当たりのガス消費量は、約500m³程度になり、ガス代は500×300=150,000円となり、ひと月当たり15万円の削減になる。1基当たり年間180万円のコストダウンが実現できる。

当社の今までの実績の一つとして、7年前に1台導入した顧客がガスの使用量がほぼ1/2になったうえ、トラブルも少なく順調に稼働ができた。このことから、この顧客ではるつぼ炉の生産ラインを2024年4月より6台あった排熱回収機能のない溶解炉すべてをニイミ式リジェネ溶解炉に置き換えて、合計7台を稼働させている。
この現場でもガス消費量もほぼ半減となり、コスト削減、CO₂排出削減に成功している。

“炎”の下の力持ちとして

当社として、ユーザーの声を聞きながら、電力消費なども含めていっそうの省エネ性能の向上と耐久性の向上などに取り組んでいきたい。
また計装配管や制御などについてもユーザーからの要望に耳を傾け、より使いやすくトラブルの少ない省エネ炉に改良していきたいと考えている。
日本ダイカスト展示会ではブースを訪れたダイカスト工場の関係の皆さまより、連続溶解炉において、ガス溶解と電気ヒータによる保持を組み合わせたハイブリッド方式への関心が寄せられたことから、これらについても検討を進めていく。

ニイミ産業グループは、ニイミ式リジェネ溶解炉の提案だけではなく、製造工場の役に立つ活動やサービスを強化しており、特に工業炉など燃焼に関わる設備のメンテナンス・修繕などを含め、製造工場を支える縁の下の力持ちならぬ「炎の下の力持ち」として、さらに貢献していきたいと考えている。